2009年2月13日金曜日

無駄な筋肉を使わない

 競技から離れ、皆が楽しんでいる様をリラックスして見るとき、操縦者の姿勢はあまりに個性に富み、彫像のデッサンにちょうど良いのではないかと妄想してしまうほどです。
 どんなスポーツ・武術でも、身体を硬くしなさい、と教えるものはありません。
 鏡の前でぐっと腕に力を入れてみてください。筋肉は収縮をしている筈ですが、腕は動いていません。なぜでしょうか。これは、拮抗筋というもののはたらきによります。一つの筋肉の動作に対し、別の筋肉が収縮し、全体として仕事をしない筋肉のことを言います。
 では次の実験です。腕全体に力を入れたままで、腕を動かしてみてください。・・・動きはぎこちなく、さらにガタガタと震え、繊細な動きはできないものと思います。加えて、動く速度自体も遅い。更に加えれば、その動作のあとはとても疲れてしまいます。
 さらに悪いことには拮抗筋を使う動作は、脳の処理能力を多く取ってしまうことです。操縦中は、動かす必要のない筋肉に貴重な脳の処理能力を割くべきではありません。

 操縦中に身体を硬くしたり、彫像のようなポーズを取ってしまう気持ちはわかります。気持ちはグライダーに搭乗し、体重移動しながら風と格闘しているのですから。でも、拮抗筋のデメリットに気がつけば、彫像になるのをやめ、地上の操縦者としてベストを尽くす方が賢明です。深呼吸でもして意識して身体から力を抜き、彫像をやめ、送信機を傾けたり上にしたり下にしたりするのをやめてください。送信機に傾き検知機能は付いておりませんし。
 HLGはスポーツなのです。かろやかなステップで機体に正対して立って下さい。機体が流されているのに、まるで根でも生えているように足を固定し、身体や首をねじって機体を見ている彫像を目撃することがありますが、視野の傾斜や頭部の傾きは、バーティゴ(空間把握のミス)を産みやすいのです。
 右のツバメは、身体はターンの最中ですが、頭部は地面と並行です。常に機体をまっすぐ見て、身体の力を抜き、指の先までリラックスすれば、あなたの能力は簡単に1.5倍にも2倍にもなるでしょう。