穏やかなインディアン・サマー、連れてきた子供達と外で弁当を広げ、お昼にするとき、何ともいえない幸福感につつまれます。さわやかな風が時折、お弁当の包装をくすぐり、時に袋などを連れて行ってしまいます。「重しを置いて、ゴミを散らさないようにね」
一緒に付いてきたお父さんは言います「時々吹くこの風は、
サーマルだよ」。お母さんは全く無視ですが、子供達は「サーマルって、なに?」。
「サーマルはね、熱上昇風っていうんだけど」
・・・地面や大気には、暖かい部分と冷たい部分ができます。暖かい部分は太陽光に暖められたり、冷たい部分はしめったところだったり、雪が積もっていたり。とにかく、地球が回っている限り熱上昇風はどこかにあります。雨が降っていようとも、夜中であろうとも、それはできます。天気図の上に低気圧と高気圧が尽きないように・・・熱上昇風も尽きることがありません。それは「必ずどこかにある」のです。
温度差があると、暖められた軽い空気は、上昇しようとします。もしくは、周囲の重い空気は、軽い空気を押しのけて下に潜り込もうとします。
空気は軽いものの代表のように考えられます。その重さは・・・1立方メートルにつき、約1.2キログラムです。1.2キログラム!あなたのグライダーなど押しつぶしてしまう重さです。重い空気は、暖まっても簡単には動こうとはしないでしょう。空気の粘性も無視できません。何と、水の1/50でしかないのです。動粘度に至っては、空気の方が10倍以上も大きい。あなたの回りの大気は、思ったよりもベタベタネバネバしているのです。
こういった大気は、容易には動こうとしません。なにかきっかけがないと、そこでよどんでいます。以前にも書きましたが、立木や地面の変化(川や水たまり)、自動車や建屋、崖、地面の盛り上がりや裂け目などの障害物に当たると、やっと空気は重い腰を上げ上昇をはじめます。
さっき書いたように空気はネバネバしているため、回りのやはり暖まった空気を引き連れて移動しようとします。半球形のドームのようなものが、成長を始めます。同時に、コリオリの力により、反時計方向に渦を巻き始めます。それでもまだ、暖かな空気はそこで頑張っていますが、やがて耐えきれなくなり剥がれ、さらに周囲の空気を引き込みながら上昇を始めます。
重い空気が渦を巻きますので、仮想的な力である遠心力がすかさず働きます。結果、何が起きるかというと、中心部が吹き上がり、周囲部に向かって吹き下ろしながら、ちょうどドーナツのような形状のものが周囲吹き下ろし、中央部吹き上げ、で上昇してゆくと考えればいいでしょう。
ただし、実験室ででも無い限り、綺麗な形状の熱上昇風が立ち上がることはなく、いびつな形状で上がっていくことが多いものだということは忘れないように。
一度熱上昇風が行ってしまうと、その地域に再度熱上昇風が生じるまでには、充電時間が必要になります。また、熱上昇風は風の流れのなかで移動していることも考慮が要ります。
上記で解ることは、以下です。
- 熱上昇風は、どこかにへばりついている。
- きっかけがないと、剥がれて上がり始めない。
- 反時計方向にゆっくりと渦を巻いている。
- 周囲部分は吹き下ろし、中央は吹き上げ。
- おなじ場所に周期的に生じる可能性がある。
- 暖められる場所が変われば、発生する場所も変わる。
そうすると、すぐに以下のように考えて飛べばよいことが解るはずです。
- さっきサーマルが発生していた場所には、時間を置いてまたサーマルが発生する可能性が高い。
- 地面に「きっかけ」のある場所の風下を飛ばす。
- 右旋回の方が多少、効率がよい。
- 熱上昇風の境界では、下降風に蹴られるので、蹴られた逆方向に熱上昇風の芯がある。
- 朝/午前/昼/午後/夕方で発生する場所が微妙に変わる。
- 本流風の中での変形を意識して、センタリング位置を流す。
- 熱上昇風の回りは、下降風。脱出時は熱上昇風の球を、垂直に突っ切るのが最短距離。
- 小さなするどいリフトがあったときは、熱上昇風が剥がれる直前の可能性が大きい。
- 自分の回りの風向きが変化したときには、その風下に熱上昇風がある確率が大きい。
常に頭の中で、自分の周囲にどの様な風が吹いているのかを想像し、周囲の大気の流れの様子の立体的な地図を組み立てて下さい。頭の中にその立体地図を思い浮かべながら飛ばすことができるようになると、あなたには熱上昇風が明確に「見える」ようになるでしょう。