2009年2月21日土曜日

速度に注意しながら飛ばす

 日本は狭いようで広い土地です。いえ、面積的な面では過密な地域なのですが、そこに住む人たちの特性は地域ごとにバラエティに富むと聞いています。ある地方では他人のフライトに口を出すようなことは無いといいますし、またある地方では和気藹々とやじが飛び、またある地方では「何やってるんだ!ピッチングしてるぞ!!」と怒号が飛び交うようなこともあると聞きました。これも愛の鞭なのでしょうけれど、必死で操縦している競技者にとってみれば大きなお世話のような気もします。言われるまでもなく本人は体をねじったり送信機をひっくり返したり、必死なのですから。

 冗談はさておき、ピッチングというものは操縦の未熟さのシンボルのようにいわれます。これは、-僕にとっては腹立たしいことには-全く正しい事実なのです。ピッチングはあなたの翼の酸素欠乏を意味しています。翼にとって気流こそが大事なものであり、ピッチングに入れて機速を失えば、次は頭を垂れて一気に高度を失う羽目になります。せっかく稼いだ大事な大事な高度を、無為に失うのです。これほどつまらないことはありません。
 さて、ではどのように飛ばすべきでしょうか。一般的には頭を押さえて、などといいますが、定量的には、6.5度までの迎角の範囲内で飛ばせ、ということです。
 右上の図は、横軸に迎え角、縦軸に滑空比、つまりあなたの翼の活きの良さ、をとったものです。迎え角6.5度を超えると、グラフが途切れています。これは、演算の途中に解の収束する条件を満たせず、答えが出なかったということを意味します。つまりは失速が起きていると考えればよろしい。一般的にHLG機に用いられる翼型では、失速は羽の中央部より起き、だんだんと翼端に向かって伝わりますので、ころんと翼端失速を起こすようにはなりにくいのですが、イメージ的には「活きの良さ」は6.5度を超えると一気に失われ、グラフにはありませんが滝のように一直線に滑空比が悪化すると考えてよいでしょう。
 右の下側の図は、右上のものと全く同じ条件を、横軸を速度としてプロットしたものです。時速17キロのあたりでグラフが途絶えているのがわかります。時速17キロを割ると、あなたの翼は窒息し死んでしまうのです。生き返らせるためには、高度という代償を支払う必要があります。それは時に2~3mにもなり、競技者のため息のおまけもついたりします。
 興味深いことには、最大の翼の滑空比が得られるのは時速20キロ近辺だということです。20キロから上はなだらかに悪化し、20キロから下側には急激に悪化します。となれば飛ばし方は明確で、速度を殺さないように飛ばせ、これだけです。
 迎角を精密に制御するのは難しいことです。熟練ともなればある程度は見えてくるものらしいですが、駆け出しの僕にはさっぱりです。ならば、速度を殺さないように操舵をしろ、ということです。そこだけ気をつけて飛ばすだけで、あなたの翼は生き生きと空を駆け回ることでしょう。
 もう一つ、アドバイスを加えるとすれば、ピッチングを起こしそうになったら通常はダウン舵を打って速度を維持しますが、上昇風センタリング中に有効な手としてエルロンを操舵し、深い角度に横転するやりかたもあります。